食用油の劣化とは、油が古くなって色や味が悪くなってくることですが、これは油が酸化されて品質に変化を生じてきたということです。
酸化は油が空気中の酸素と反応して起こる現象で、光や熱にさらされたり、金属などと接触することにより、さらにその反応は促進されます。この酸化の原因となるのが人間の老化の原因にもなる活性酸素です。活性酸素によって酸化された油は過酸化脂質というものに変わり、人体に有害な作用を及ぼすことになります。例えば、動脈硬化を促進したり、遺伝子を構成するDNAを傷つけたりすることになります。劣化した油を口にしたときに直接感じられる有害な事象としては、胸やけや吐き気をもたらすことがあります。
また油が酸化によって分解されると、分解物が集まって結合して分子量の大きいな重合物になり、油に粘りが出てきます。
油の劣化を調べるためには科学的な分析方法がありますが、家庭の主婦なども油をよく観察することによって劣化しているかどうかを、以下のような方法で見分けることが出来ます。
まず色ですが、油は劣化すると色が濃くなってきます。天ぷらなどの揚げ物を何度も同じ油で揚げていると色が濃くなってきますので、これは容易にわかりますね。次に前述のとおり古くなると油に粘りが出てきます。また、新しい油のときはいい香りがしたものが、焦げたような油臭い臭いに変化してきます。通常の天ぷらを揚げる温度では煙が出ないのに、酸化によって過酸化脂質が出来てさらに煙の出やすい脂肪酸などに分解されると、今までは出ていなかった煙が出ることもあります。このような煙の出る油は過酸化脂質が増えている可能性がありますので、使用は避けた方がよいでしょう。油が新しいときでも揚げているときはその食材の周辺で水分により泡が出たりしますが、例えば出来上がった天ぷらを油から引き揚げても、細かい泡がいつまでも残っている場合も劣化していると言えるでしょう。
したがって、天ぷらなどに使った油を保存する場合には空気が入らないようしっかりと容器のふたを閉め、直射日光にさらされるような場所や室内の灯りが強くあたるような場所、温度の高い場所は避けて保存しましょう。
なお、油の使用回数について、何回も同じ油を使ってはいけないという話もありますが、油の種類や加熱する温度の違い、揚げ物に用いた食材の種類、保存方法など、いろいろな条件によって異なります。ちなみに高温で揚げる場合に適している食用油としては、臨界温度(過熱に耐えられる限界の温度)の高いオリーブオイルやピーナッツオイルなどがあります。いずれにしても、使用回数を気にすることよりも、その油が劣化していないかどうかしっかり観察することが重要と思われます。
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